okubo_sugaku’s diary

オオクボス〜ガクです。

まとめ

 

ある夜、エーリッヒがいつもの発作を起こした時の話。彼はその大きな瞳に涙をいっぱい乗せて、ただただ、僕を見つめていた。喉はヒュウヒュウいっているし、体もガタガタ震えている。辛さからか、自らの体を抱きしめ、彼の二の腕には爪が食い込んで薄皮が剥けていた。それなのに、エーリッヒ

 


井戸の底から空を仰ぐエーリッヒ蛙と、そんな彼の手を握り俯向くミヒャエル蛙

 


痩せたエーリッヒは時々暴れて、時々動かなくなって、少しするとまた優等生になる。制服を着ても隠せぬ痩せた体。

 


またエーリッヒが隠れるように着替えている。痺れを切らした僕は、シャツを脱いで自分の身体を彼に見せた。僕も、同じ、大丈夫。って彼に優しく言ったよ。僕らは静かに抱き合った。骨と骨がコツンと当たる音、ユックリとなる心拍、低い体温が重なって

 

 

でも僕は決して、食べろ、と言わない。言えなかった。僕も、食べられなかったからだ。ああ分かるよエーリッヒ、肉が、あの腐った人肉と重なるよね、破壊された折から逃げた豚や牛の痩せた肋骨が目に焼きつくよね。でも僕も君も、あの家畜と同じように、肋骨が見えている

 


エーリッヒはすっかり痩せ細ってしまった。肋骨が形を現し、骨盤には痣ができていた。背骨が連なるのもよくわかる。彼は着替えを見せたがらなかった。隠れるように服を脱ぎきし、僕がそれを見ると気まずそうに、口を開き、何も言わずまた閉じる。食堂でもパンを口にすればいい方だった。

 


「エーリッヒが、無事なら、無事なら、エーリッヒが無事なら、僕は、死んだって構わないんだよ。」

 


よっぽどミヒャエルの方が崩れそうなんだ。エーリッヒはミヒャエルという存在が多少のはけ口になってるけど、ミヒャエルはなにもない。エーリッヒをおぶりながら、自分の過去も背負って、ニコニコしてる。可愛い

 


小さく呟く声は、心なしか「エーリッヒが、エーリッヒが、エーリッヒが」と言っているようであった。額の上に置かれた冷たい手の平は小刻みに震え、その振動が脳に伝わる。辛いのなら、吐き出せばいい。とは言わない。ミヒャエル、君は、口にすると壊れてしまうんだろうから。

 



エーリッヒ「おはよう。」


ミヒャエル「おはようエーリッヒ!」


エーリッヒ「目の下のクマ。僕ほどじゃないけど…。ちゃんと寝たか?」


ミヒャエル「…うん!ぐっすりさ」


あぁやめてよエーリッヒ。やめてくれ。僕のことなんか気にしないでよ。


ミヒャエル(エーリッヒがこんなことされずに済むなら僕は構わない。エーリッヒにはこれ以上乾いて欲しくない。朝、エーリッヒがいつも通り、おはよう、と言ってくれれば、僕は何でもいい。)

 


クラスメイト「エーリッヒ、君、もっとジョークを覚えたほうがいいな!」


エーリッヒ「ジョーク。」


クラスメイト「君の番犬ミヒャエルに、嘘でも吐いてみたら??」


エーリッヒ「嘘。」


クラスメイト「復唱やめろ。」

 

 


肌が白い。目は大きいけど鋭くて達観した顔付き。クマの絶えない目元。声は凛としていて透き通っているが高すぎない。頭が良く他人と必要以上に馴れ合わない。過去が重く、十字架を背負って生きている。毎日人前では自分を律して生きているが、1人の時は脆く崩れる。これが性癖、すなわちエーリッヒ

 


エーリッヒ「父さん母さん、僕は貴方達が死んでまで守るほどの存在ではありませんでしたよ。僕をおいて勝手に死んだ事、恨んでおります。」

 


で何がいいたいかというと、ミヒルがエーリッヒ以外の人間がおかしな物体にしか見えないという症状をかかえてるって設定美味しいと思ったんだけど、さらに精神的に参っちゃって、エーリッヒ以外の人間の声も姿も見えなくなって怖くてウロウロしてた

 

遠くから声がするの。それはエーリッヒの歌声で、藁にもすがる思いで声のする方へ彷徨い歩く。歌声は音楽室からで、入ると音楽室の真ん中でエーリッヒが歌ってるの。(本当は授業中だけどミヒルにはエーリッヒしか見えない)それでミヒルは安心してエーリッヒに抱きつく

 

 

ヒル「…なにしてるの?」

エーリッヒ「…ぁ、あ、ミヒル…ミ、ヒ、…死にたくないのに…う、でも痛くないと…駄目なんだ…」

ヒル「馬鹿…馬鹿だなエーリッヒは…。おいでよ、消毒したげる。エーリッヒ、自分を罰したくなったら僕にいってよ、僕が罰っするよ。」

 


エーリッヒは今日もリンゴを一切れ食べただけだった。シャワーへ向かうエーリッヒの肋はまるで彼の側にいつもあるオイルヒーターみたいだ。エーリッヒは寒がる。春を過ぎても着ている上級生からのお下がりセーター、そこから出た首はヤケに細く見えた。

僕は彼に食べないかと提案する資格さえない、というのも実際のところ僕もエーリッヒとさして変わらぬ食事量かつ体型だからである。エーリッヒは僕に一切の指図をしない。僕はエーリッヒに食べ物を持って来てはエーリッヒの目の前で食べてみせる。そうして吐いて、エーリッヒに頭を撫でてもらう。

 


うまく寝付けない夜は大抵エーリッヒも起きていて、布団は震えて彼の方からずり落ちる。僕は彼の布団に入り込み背後から抱き締める。

 


エーリッヒが少しずつ物を食べるようになったことは大いに喜ばしいことだった。僕は今まで持って来ては自分が食べて吐いていた物をエーリッヒに与えた。数日後、ミヒルは?と聞かれて初めて自分が何も食べてないことに気づき焦り、パンを齧って吐いて、また焦った。

 


ヒルがエーリッヒを撃つ。泣きながら、エーリッヒの前で初めて泣きながら、謝りながら撃つ。エーリッヒは肩を撃たれて倒れる。ミヒルはエーリッヒに馬乗りになって額に銃口を当てる。エーリッヒが笑う。やっと殺してくれるのかと笑う。そうだよ、といいながらミヒルは自分のこめかみに銃口を当てる

ヒルの首が発砲の反動でしなり、こめかみから血を吹き流し後ろに倒れる。エーリッヒはゆっくりと起き上がり、微かに息を吐くミヒルの顔を両手で撫ぜる。お前も僕を置いていくんだね、ミヒル。ミヒルの瞳孔が開く。

 

 

あの日エーリッヒの背中で目覚めた時から、エーリッヒの顔以外は全部の絵の具をグチャグチャにしたパレットのようにしか見えない。目玉を抉られたせいか、もしくは強く殴られたせいだろうと思っていたが、どうやら違うみたいだ。朝起きた時から異変を感じた。無音。宇宙空間か異世界にでも飛ばされたような無音。

 


起きた瞬間、自分の体に起きた異変に吐き気と目眩がした。恐ろしい程の無音空間に放り出されたのだと理解するまでに、僕は部屋をうろつき小指をぶつけて叫ぶまでをした。小指とタンスがぶつかる音は聞こえなかったが、情けない叫び声は聞こえた。そうゆう事だった。

部屋を出ると予想より生徒が行き交っていたが、勿論喧騒は聞こえなかった。

 


小さな妖精が目の前で踊っては粉になって消えるような感覚に襲われて起きるとひどく寝汗を掻いていたがそれよりもまだ粉になって消える妖精の気配が残ってることの方が気になった。というのは、妖精の足跡とも言える様な愉快な羽音がずっと耳の奥にあるからで、逆にそれ以外の音は聞こえなかった。エーリッヒの布団は既に、冷えた暖かいスープのような哀愁を放っていた。

 

 

川の目の前まで来た。エーリッヒ、エーリッヒ…今頃君は詩の暗記テストかな?最期にエーリッヒの声、聴きたかったかもしれない。凛と筋が通ったようで、夜はすぐに震えちゃう、高すぎず低すぎず、耳に自然と入り込む君の声色。どこに紛れていても、君が少し喉を震わせればすぐに君の居場所がわかるよ

君も、君の声色も、君の全部、大好きだったさ。嗚呼、後生だから、エーリッヒの読む詩が聴きたいなあ。

「Half ihr doch kein Weh und Ach,Mußt' es eben leiden.   だが、嘆きも叫びも役立たず、まさに苦しむしかなかった。」

今の僕を詠ってくれるみたいだ。…なんて。そんな生半可な覚悟で川の淵立ってるわけじゃないから。

ゆっくり、ゆっくり、前進する。靴の中に水が入ってきて非常に不愉快だ。いいや気にしない

膝小僧も水の中。おへそも水の中。僕の身体、下から下から、どんどんどんどん水の中。

耳には川の流れと、石の転がる音だけが響いてきてね、すごく心地が良い。遠くの石の音まで聞こえるから、水の中は案外騒がしかったり。流れはそこまで強くないから、若干能動的に身体を寝かせなくちゃいけない。流されて行くのを感じる。嗚呼、これで僕の笑ってないとこ、エーリッヒに見られなくて済んだな。とそう思ったら、安心して涙が出た。涙も身体も、僕の想いも、流されて行きます

 

 

 

っていう、高校の時の創作メモを一部、コピペしたものです。

ドイツの少年、エーリッヒとミヒャエルのお話

高校生の妄想はすごいなと思う

まだ私の中では、ギリギリ黒歴史じゃない

それより、高校生ワイはもっと、句点を打ってほしい…